短歌で感じるエロ魂 清少納言と藤原行成の危ないやり取り~枕草子より~
こんばんは。歴史の中でも特に平安時代を愛するオタク潮田水音です。本日は私を平安オタクにするに至った戦犯もとい清少納言女史の逸話を短歌と共に紐解いてイキたいと思います。
清少納言と藤原行成、そして枕草子
まず私の尊敬する清少納言女史について説明します。大河ドラマ「光る君へ」にも出てきておりますね。一条天皇の妃である定子様にお仕えする女房です。定子様にずっと様付けなのは枕草子を学んでいくうちに清少納言に感化されつつ敬愛の念が抑えきれなくなったからです。というよりきっと定子様を呼び捨てにしようものなら清少納言に「様を付けろよデコスケ野郎」と言われることでしょう。それくらい清少納言の定子様への敬愛の念は深いのです。今回は行成との関係にフォーカスしますがこちらもいずれ掘り下げたいですね。
さて、この清少納言。文才はあったし知識も豊富だし仕事もかなりできる女性でした。元祖バリキャリではないかと感じるくらいの彼女ですが、どうにも短歌にコンプレックスがあったそうです。それもそのはず、彼女の父親は藤原元輔。めちゃくちゃ凄い歌人とされている人です。いまいちピンとこないな~と思った方は「父親が羽生結弦で自分もスケート選手になった」と考えてみてください。プレッシャーで吐きそうになりませんか?そのような背景があったからか、「短歌は苦手」と公言していました。そんな折に出会ったのが同じく短歌が苦手と公言している藤原行成。彼も父親が有名な歌人であり、コンプレックスがあったようです。仕事はかなり出来るし知識も豊富で話が合ったのか徐々に打ち解けていき、数多くの逸話があります。そんな行成と清少納言のやり取りは『枕草子』に記されています。
清少納言の句、小倉百人一首62番「夜をこめて」の意味
お互いに仲が良いことを公言していた清少納言と行成ですが、結構行成はやらかしてます。問題のやり取りについて見てイキましょう。
夜更かししながら行成と清少納言が話し込んでいたある夜、行成は「明日仕事で早いから遅くなりすぎるとつらい」と言って帰ります。翌朝、清少納言の元に「もっと話したかったのに鶏の声に急かされました」といった趣旨の手紙が届きます。それに対して清少納言は「あら、夜更けに鳴くなんて孟嘗君の鶏じゃない?」と返します。孟嘗君の鶏というのは、鶏の声で開けていたとされる函谷関を抜けるために鶏の鳴きまねをした孟嘗君のように帰るために適当なこと言ったのね、と拗ねてみせた感じです。知識バトルしながら可愛げを見せるなんてさすがは俺たちの清少納言。ここで引き下がらない行成は「函谷関じゃなくて逢坂の関ですから。私と貴方の逢瀬の話です」と煽ります。そこで煽られた清少納言、優雅に打ち返します。これが百人一首にも収録されている短歌です。
夜をこめてとりのそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ
心かしこき関守はべり
〈潮田流超意訳〉
夜も明けてないのに鶏の鳴きまねで騙して関所を通ろうとした話があったわね?私の心の守りを崩そうとしたってそうはいかないわ。おあいにくさま、ガードが堅いから会えないの。函谷関のちょろい関守と違ってしっかりしてるのよ。
知識フル装備で打ち返してますね。少し補足いたしますと、平安貴族にとって知識で殴られたら知識で返さないといけないようなもので、中国の故事や日本の歴史はわからないと恥ずかしいとされていました。インターネット老人会に所属するオタクが「ぬるぽ」と言われたら「ガッ」と返すようなものです。ただ、女性でここまでしっかり打ち返せる人はなかなかおらず、定子様や行成が清少納言に一目置いていたのはこういったやり取りができるところにもあったのでしょう。
さて、問題なのはこの後です。行成からの返歌。
逢坂は人越えやすき関なれば鶏鳴かぬにもあけて待つとか
〈潮田流超意訳〉
逢坂の関は越えやすい関所ですよね。貴方も同じように声かければすぐヤれるって聞いてますけど何お堅い女ぶってるんです?
はい、最低!!!!!!気になってるピから来たLINEでも一気に冷める!!!!!!それどころかブロック推奨!!!!!!
清少納言も開いた口が塞がらなかったのか返事しないで既読無視キメました。そして後日「あんまりにもサイテーだったからなかったことにしといたわ」と行成に告げています。それに対して「ありがとうございます……」となっている様子まで『枕草子』に載っているので行成、やらかした自覚はあったようです。一応庇っておくと、こういったやり取りは早さが命で遅いとダサいという烙印を押されてしまうので行成も焦ってとんでもないことを言ってしまったのかもしれません。それにしたって最低ですが。
短歌のやり取りから読み解くエロスと面白さ
さて、今回は清少納言と藤原行成の短歌のやり取りを中心に書かせていただきましたがいかがでしたか?こういったやり取りを知っていると歴史や国語の時間が楽しくなるかもしれませんね。まあこのコラム、18禁なので授業を受けてる学生には届かないんですが。それでは良い子の読者の皆様、また次のコラムでお会いしましょう!
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