LGBTQといっても一緒くたにできないことがある。例えば、レズビアン界隈では主に見た目やスタイルを表す「フェム」「ボイ」「中性」という言葉があり、それらはゲイコミュニティには存在しない。“前髪系ゲイ”※を自称するゲイ2人が語り合う「前髪ゲイラジオ」を聴いていると、ゲイコミュニティにはさらに細分化された「銀河」があることを知った。

※本記事でいう「前髪系」とは、男性的特徴(ヒゲ・短髪・筋肉など)がモテやすいゲイ業界で、そうではない特徴を複数もつゲイのことを指す。前髪が長い人が多いことから「前髪系」と呼ばれる。

銀河とは、ラジオ内で度々使われる造語であり、ゲイコミュニティで主に外見をもとに分類されるグループのことを指す。確かに、国内の某ゲイ向けマッチングアプリでは、体型や体毛の濃さ、雰囲気などで各ユーザーがそれぞれの属性に配置される。それほど銀河が重視されていると言えるだろう。

銀河が分かることで自分のタイプの人と出会いやすいメリットがある一方、カテゴライズされることに苦しめられる人もいるのではないだろうか。ノンケ(異性愛者)の世界でもモテるとされるタイプの人を思い浮かべることはできるが、ゲイの世界では特に格差が著しく表れているように感じる。


東京たらればゲイへインタビュー

前髪ゲイラジオのメンバーであり、“前髪系”を生きる東京たらればゲイは、現在、日本からカナダに移住し、ゲイライフを送っている。そんな国内外のゲイシーンを見る彼に、連載「二丁目の性態図鑑」#2では、ゲイコミュニティにおける「銀河」の話を伺った。

ーゲイコミュニティでは、主に外見でジャンルを分ける言葉が存在します。具体的に教えてください。

英語圏のゲイコミュニティで浸透している言葉として、若くてスリムで毛が薄い「Twink(トゥインク)」、体脂肪の低い筋肉質な「Jock(ジョック)」、体毛や髭の濃い「Bear(ベア)」など他にもたくさんのボディタイプ※が挙げられます。

日本の場合、若干英語圏に比べると抽象的に感じます。僕が属している「前髪系」はおそらく「Twink」に近いと思うのですが、英語圏ではそこまで前髪の占めるパーセンテージはジャンルを分けるうえで関係ない印象があります。一方で、日本は体型よりも、髪型に前髪があるかどうかや顔面の特徴(一重二重・髭の有無)が大きな違いを生む気がします。

※参考記事:MAYL WEAR「GAY MEN: ARE YOU A JOCK, OTTER, BEAR OR WOLF? WHICH TYPE ARE YOU?」

ーいわゆるモテるとされるゲイの特徴は?

短髪、髭、マッチョの3要素かなと。コミュニティ全体を見ると、GOGOボーイのようなマスキュリン(男性的)な人がモテる傾向にあります。僕は成長するにあたりゲイの世界を知り、短髪がモテ要素の一つであることを知りました。僕はストレートの世界で流行っている髪型を選んで好む前髪系だけど、ゲイコミュニティでモテる人になるには、前髪をなくしたほうがいいと感じます。短髪に挑戦した時期もありましたが、自分が若干ノンバイナリーっぽい要素も持つからか、しっくりこなくて諦めました(笑)

ーゲイの世界と異性愛者の世界では、モテる男性像は違うのでしょうか?

違うと思います。カナダに来て改めて感じたんですけど、アジア圏のモテと欧米のモテには若干ズレがある気がしていて。アジア圏の異性愛者の世界では、中性的な男性が人気があって、欧米では筋トレしたマッチョな男性が人気がある印象です。日本の異性愛の世界では、ジャニーズの影響か分かりませんが、マッチョでワイルドな男性より、細身で背が高く、二重の人を好む人が多いですよね。

ー反対にゲイコミュニティでの“モテ”は、マスキュリンでマッチョであることとされていますが、この違いに理由はあるのでしょうか?

これは本当に難しくて……。個人的な解釈ですが、男性が好きな男性をゲイとするなら、ゲイのマジョリティは男性的なところに惹かれるのかなと。中には中性的な男性がタイプな人もいるので一概には言えませんが。

ゲイコミュニティという言葉を使う時、そこにはバイセクシュアルやパンセクシュアルの男性なども存在する場合があると思っていて。ゲイ以外のセクシャルマイノリティ男性のタイプなどを見ていくと、フェミニンや中性的な要素を持つ人が好きという人の割合はもしかしたら多くなってくるかもしれません。

ー私の憶測ですが、好きになるタイプはセクシュアリティが形成される最初の段階で違いが生じる側面もあるのかなと。例えば、私はレズビアンですが、もともと男性とお付き合いをしていたので、ボーイッシュな女性を好きになるハードルは低いというか。

僕もそれはあると思っていて、ゲイと一口に言っても、生まれた瞬間からゲイの人、人生の途中で切り替わった人など様々で、グラデーションがあるような気がします。僕のことを好いてくれる人は、バイセクシュアルの方や過去に女性経験がある人、ノンケで中性的な人に興味がある人などが多いです。個人的には100%ストレート、100%ゲイの人はあまりいなくて、人によって比率が異なると思っています。

ーモテるゲイの像はあるけど、実はいろんな種類がいますよね。ゲイコミュニティにおける「銀河」はヒエラルキーではなく、種類として存在するということでしょうか?

ゲイコミュニティにコミットしている人、つまり積極的に“ゲイ活動”をしている人の方が可視化されやすいというのはあります。その人が新宿二丁目で見かける頻度が高ければ、自然とそのイメージが浮き彫りになりやすいというか。

それに比べて前髪系はクローズド(周りにカミングアウトしていない状態のこと)で生活している人が多い気がするんですよね。みんな当たり前にどこにでも生きているんですけど、前髪系は異性愛者の世界でも馴染んで生きていけるように擬態化している人が多く、二丁目をあまり好まない人も多い印象があります。となると、仮に前髪系の人口が多いとしても、ゲイコミュニティの中では可視化されにくい。なので、ゲイコミュニティにコミットしている人たちがヒエラルキーのトップとして映りやすい傾向にあるとは思っています。

ー日本にはGMPD(ゲイコミュニティで人気とされる「ガチ、ムチ、ポッチャリ、デブ」の略称)に向けたパーティーもありますよね。そう言う意味では、ゲイコミュニティには似た属性同士が集いやすい雰囲気も感じます。

同じタイプの人たちが惹かれ合うことは多いですよね。例えば、僕がガチムチ系のパーティーに行きたいと思っても、そこに行くためには筋トレして短髪にして同じ属性に寄せなければならない。

逆に言うと、同じ性別で多少系統は寄せられるからこそ、本当はガチムチにはなりたくないけど、タイプの人とセックスするために見た目を変える人も結構います。前髪系ゲイの人でも歳を取るにつれ、前髪系銀河内の需要の低下と共に、短髪髭マッチョに移行していく人も多い印象です。

ー前髪系から短髪髭マッチョに移行する理由は何ですか?

以前ラジオで話し合った時は、前髪系は若さの象徴として認識されている側面があるので、いつかは卒業しなきゃいけないと考える人は多いのかなという考えに至りました。けど、僕のいるカナダではボンデージを着た70歳くらいのおばあさんを見かけたり、みんな年齢関係なく好きな格好をしています。なので、今は前髪系でありたいなら変える必要はないなと思いますね。

ただ、日本のゲイコミュニティの規模が小さく、人種も基本的に同じ日本人のため見た目の均一化はどうしても起こりやすい。セクシュアリティをオープンにしている人口が他の先進国と比べて日本は少ないからなのか、やはり同じ属性の人たちで群れる傾向はありますね。

ーゲイコミュニティは一見すると多様性だと捉えられる一方で、実はヒエラルキーが存在する側面もあるんですね。

一時期、ネット上で「キショガリ(気色悪いガリガリの略)」という言葉が流行りました。ゲイコミュニティではガチムチが人気な中、ガリガリな人は価値がないという意味で蔑称として生まれた言葉です。それに派生して「前髪キショガリ」という言葉が出てきてしまって。レインボープライドで見たオープンな雰囲気と、コミュニティの中で見た排他的な雰囲気は矛盾しているなと感じました。そういった経験がきっかけで、ぼくはネット上で前髪系がなにを思っているかなどを発信する活動をはじめました。

ーゲイコミュニティのヒエラルキーや外見主義は今後どう変化していくと思いますか?

変わっていくと思います。徐々にLGBTQが世の中に受け入れられることで、色々なゲイがいることが可視化され、結果的にこういうゲイがいてもいいと思えるようになると信じているからです。

僕のいるカナダのトロントでは、チャーチストリートという日本でいう新宿二丁目のような場所があり、そこにはいわゆるモテる外見の人たちだけでなく、自分の好きな服を着た様々な人たちがいます。人種が違うとそもそものベースも違うから、それを受け入れるしかないじゃないですか。なので、前髪切るべきとか鍛えるべきとか、そういうこと以前に髪の毛や肌の色が違うという意味でも多種多様。

日本では日本人がベースにあるので、あるべき姿が強要されやすい側面もあると思います。ですが、モテるから自分を変えるというのは本来あるべき姿ではありません。

……..とは言いつつ、ぼくもモテたいので筋トレしたりするんですけど(笑)これからの時代はみんなが「自分はこういうゲイであり、人間です」というのを可視化することで、寄せる必要はなくなっていくのではないのでしょうか。それが理想的だと思います。

インタビューを終えて

私はレズビアンなのでゲイコミュニティの内情は詳しくないものの、レズビアンコミュニティと比較すると異なる点があることに気づいた。レズビアンコミュニティでは「◯◯系」など、タイプで分ける言葉が少ない。確かに、ビジュアル系やフェムタチっぽい人など、なんとなく「こういう人いるよね〜」程度には界隈の中で認知されているが、明確な言葉として存在していないのだ。以前一緒に飲んだボーイッシュな女子が「ボイは肩身が狭い」と言っていたので、もしかしたらレズビアンコミュニティの中でも薄らとヒエラルキーは存在するのかもしれない。事実、「イキリボイ」と呼ばれるイキったボーイッシュは嫌われの対象であり、その一部として勘違いされてしまうボイは多いみたいだ。もしかしたら、女性の世界では外見より内面を重視する人が多いのかもしれない?今後の分析課題として、この記事を締めることにする。

記事一覧

Honoka Yamasaki

昼間はライター・編集者として性について発信、夜は新宿二丁目で踊るダンサーとして活動。 あらゆる性や嗜好について取材している。 TimeOut連載「SEX: 私の場合」

PR

関連記事一覧