語源調査 男たちの禁断の恋、「BL(ボーイズラブ)」は雑誌イマージュのキャッチコピーから始まった
こんにちは!パティ・チャンです。
BL。どれくらいハマるかはともかく、私は女子の皆さんなら一度は通る道だと思っています。今回はその語源や歴史についてお届けします。
BLの語源とゲイ文学
BLとはボーイズラブの略、男性同士の恋愛を題材とした小説や漫画、アニメなどのジャンルであることは言わずもがなだと思います。ドラマ「おっさんずラブ」や「きのう何食べた?」の大ヒットもあり、最近ではかなり市民権を得ていると言えます。
BL(ボーイズラブ)の語源は、1991年12月発行の商業誌イマージュの表紙に書かれていたキャッチコピー「BOYS LOVE COMIC」であり、1994年ごろから定着したとされています。考案者は編集プロダクション「すたんだっぷ」代表・荒木立子さん。まさかキャッチコピーがジャンルを表す言葉として、こんなにも長く使わるとは思っていなかったでしょうね。
日本にはもともと男色文化があり、男性同士の恋愛や情事を描いた作品は「日本書紀」にも残っているほど古くから存在していました。男性が男色について書いた文学作品を、現代ではゲイ文学と呼び、BLとは一線を画す別のジャンルとして今も親しまれています。ちなみに代表格は平賀源内や谷崎潤一郎、川端康成などで、少年同士の恋愛や美少年への憧れを記した作品を残しています。また、これを語る上で欠かせないのは三島由紀夫です。「仮面の告白」にて彼自身が少年時代に抱いていた同性への恋心を赤裸々に綴り、昭和20年代の日本の同性愛世界を描いた「禁色」はゲイ文学の金字塔とも言われています。ゲイ文学は主に同性愛者や両性愛者の思いを男性作家が創作物として出版したものであり、女性作家が描いた女性向けのBLとは似て非なるものなのです。
BLの始祖と言われる森茉莉と竹宮恵子
元祖BLと呼ばれている作品のひとつが1976年発表の「恋人たちの森」。森鷗外の娘、森茉莉氏の著作で、当時女性が描く男性同士の恋愛というのは革新的でした。青年たちの愛情が行き過ぎた結果、破滅的なラストを迎える切ない愛憎物語は、三島由紀夫も大絶賛。
また、同じ頃一般の少女漫画誌「別冊少女コミック」でもBL作品が掲載されました。竹宮恵子が描いた「雪と星と天使と…」という作品は、男性編集者の反対に屈せずに掲載に至り、結果として多くの女性読者から称賛を浴びました。彼女はさらに「風と木の詩」を発表し、当時は耽美系と言われながら数多くの女性の心をときめかせていたようです。海賊版がタイなどの海外にまで蔓延っていたと言うのだから、その人気が伺えますね。竹宮恵子はBL漫画の始祖として現在まで語り継がれています。
「JUNE」「やおい」…様々な呼称の由来
1970年代のBL漫画人気の流れで、1978年、女性向け男性恋愛をテーマにした「コミックJUNE」が発刊。それまでふんわりとしていた「耽美」というジャンルを確立しました。耽美とは美を最上のものとして、ひたすらその世界にふけることを意味します。この耽美をコンセプトにした「JUNE」が男性同士の恋愛の隠語として定着しました。ちなみに中国ではBLのことを耽美と呼ぶのですが、その語源はJUNEが影響しているのではないかと言われています。
1980年代に突入し、「やおい」という言葉が誕生します。元は漫画家が「ヤマなし、オチなし、意味なし」と、自身の作品を自虐する時に使う言葉だったそうです。しかし、男性同士の恋愛を描いた作品の流行とともに、好きなアニメやゲームのキャラクター同士を絡ませる同人誌も多く出回り、その作者たちが自身の作品を「やおい作品」と自虐し始めたことから、男性同士が恋愛やセックスする作品イコールやおいという認識が広まったようです。当時、同人作家は元々いるキャラを自分好みの設定でイチャイチャさせるシーンだけを描くなど、言葉通りヤマもオチもない作品を数多く生み出しました。そして人気を博しました。
他にもゲイ雑誌「薔薇族」がありますが、こちらは完全に男性向け。BLとは程遠い、リアルな性愛を描いたモノです。
英語圏では「bromance(ブロマンス)」と言った、性的な関係はないもののBL的な関係性を指す言葉もあります。特にアイドルグループやドラマ内での役柄に対して、やおい的に愉しまれているようで、最近では特にK-POPアイドルたちのじゃれあいなどに使われているそうです。
現在、アジアで流行中のBLドラマ
LGBTQ+先進国のタイでは2015年頃からBLドラマが制作されており、現在に至るまで多くのヒット作を生み出しています。タイではBLドラマが「Yシリーズ」というカテゴリで呼ばれていますが、このYはやおいから取られたもの。
さらに日本の人気BL漫画「LOVE STAGE!!」が実写ドラマ化されたりもしています。このアニメと映画には、作者の影木栄貴さんの実弟でロックバンドBREAKERZのボーカル・DAIGOさんが、主人公である瀬名泉水の兄・瀬名聖湖役で出演したことでも話題を集めました。
そして、2020年配信されたYシリーズドラマ「2gether」がアジア中で大ヒットしたことにより、タイだけでなく、台湾、韓国などでも、日本のBLに影響されたドラマの制作・配信が加速しています。
私が学生の頃もBL作品は人気こそあったものの、分かち合える同志たちとこそこそ楽しむものでした。現在のような大ヒット、大ブームなどとは無縁な神秘的なジャンルだと感じていましたが、いつの時も心惹かれるジャンルであることは変わりありません。特に昨今のネット環境や動画配信サブスクリプションの発達は、BLのような背徳感のあるジャンルと親和性が高いのもヒットの理由だと思います。
この先もBLの魅力に気づいて沼にハマる腐女子腐男子は、世界規模で増え続けていくのではないでしょうか?
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