「お父さんとお母さんは、離婚することにしました」

最近多いとは聞いていたけれど、自分がまさかこの言葉を聞くことになるとはねぇ…
自分のセックスレスのことばかり考えて、高齢の親の夫婦仲なんて微塵も頭になかった出汁茶漬けアユミと申します。

突然の両親の熟年離婚宣言に、娘の私は驚きのあまりビニール製ダッチワイフくらい口が空いていた。なんとか絞り出した言葉も

「あー、あ?え?そうなんだ!びっくり!まあ2人で決めたことなら!うん!」

“明るく振る舞おう”が行きすぎて思わず「おめでとう!」と言いそうになったぜ。流石に地雷をタップダンスで踏みにいく行為だ、あぶないあぶない。

ということがあったのはつい先々月のこと。
うちの両親は見合い結婚で、真面目で、ごくごく日本的で、それでいて別に父と母どっちが強いということもなかった。
「アタシのダディとマミィはね?ダーリン&ハニーって呼び合ってて毎日キスは欠かさないの!めっちゃラブラブで理想の夫婦なの!」というわけでは決してなかったが、仲が悪いと思ったこともなかった。

離婚理由は「その方がお互い楽だから。経済的にもどちらも困っていないから」という比較的円満なものだったが、まあ色々置いておいて、やはり私の頭に浮かんでいるのは
セックスレスだったんじゃないの?
ってこと。

熟年離婚とセックスレスと

皆さん、波平とフネのセックスを想像したことがあるだろうか?
しまった、manmam読者ならあるに違いない。一般的には無いはずである。

ウチの両親も、セックスが想像できないくらい淡白な夫婦だった。
キスどころか、手を繋いだところも見たことがない。

一連の熟年離婚宣言聞き終え、今後の住居や相続の話などを終え、母と二人きりになったとき、ドキドキしながら聞いてみた。

「あのさあ…お父さんと…その…セックスしてたの?」

「はあ?あるわけないたい!(福岡出身)」

実の親のセックス事情

下ネタなんて聞いたことがなかった母親の口から出た「あるわけないたい!」

ああ、そうだよなあ。
あるわけないたい、だからバイバイ、萎んだオッパイ、パサつくタイ米…

思わず頭の中で韻踏みゲームが始まってしまったが、厳格な母親と腹を割って下(シモ)について話す機会なんて今しかない!と覚悟を決めて色々聞いてみた。

「いつから?いつからしてないの?」
「そうねぇ、アンタたち子供が産まれてからはなくなったねえ。
 そもそもお父さんも私も、そんなにイチャイチャするタイプじゃないのは知っとうやろ?」

「したくはならなかったの?」
「そんなにねえ…あっちがどう考えてたかは分からないけど」

ぐうぅぬ!まるで私のことである。
そうだよなあ、私、母親似だもんなあ。剛毛なところも、近眼なところも、巻き爪なところも、酢味噌が嫌いなところも似ているけれども、こんなところまで似ているのか…。

洗ってないパンツを嗅いだような顔で黙っている私に、トドメの言葉がかけられた。

「まあ、してたら離婚せんかったのかもね。アンタは気をつけなね。」

熟年離婚を決めた六十路女の言葉は、鉄アレイくらい重かった。

「セックスレスでも良いじゃない」じゃない?

今まで「セックスレスでも夫婦仲良ければいいじゃない」というスタンスでコラムを書かせてもらっていたが、呑気すぎたのかもしれない。
結構なダメージを負って、暗くなり始めた道を、実家から一人トボトボと自分の家に帰ってきた。

休みを取っていた夫と子供たちは、たった今食べたナポリタンで真っ赤の笑顔で私を迎えてくれたので、その日あった全てをつらつらと話した。
両親の熟年離婚が決まったこと、これからも変わらない家族付き合いはしてくれるらしいこと。

そして、どうやら何十年もセックスレスだったらしいこと。

離婚もセックスも何かわからない子供たちはEテレを見始めている。
夫からの返事はこうだった。

「まあ、どこもそんなもんだろ。ナポリタン食べる?」

夕暮れの帰路のせいでセンチメンタルになっていた私は、具のほとんどがソーセージのナポリタンを前に我に帰った。

したくなくてしてこなかった母親から生まれた、したくなくてしてこなかった私はいずれ、母親のように熟年離婚を迎えるのかもしれない…
そんなセックスレススパイラルの下に生まれたような気がしたが、いやいや、どこもそんなもんなのかもしれない。

もちろん生涯ずっとセックスがあるラブラブ夫婦もたくさんいるだろう。

しかし、セックスレスでも仲良し夫婦もいるのである。
だってウチがそうなのである!

セックスレスは相変わらず少し後ろめたいかもしれないが、いいかい学生さん、ナポリタンをな、ナポリタンをいつでも作ってあげられるくらいの愛情を持ちなよ。
(これはトンカツが元ネタなので、知らない人は「いいかい学生さん」でググって欲しい。)
それくらいの愛情があれば、きっと大丈夫!
そう思ってナポリタンを涙目で頬張った。

ということがあったのは先々月。

セックスレスについて迷ったり迷わなかったりして、何も解決はしなかったけれど、そもそも「解決させるもんじゃなくない?」から始まったコラムなので、こんな歯切れの悪い終わり方で一旦締めくくろうと思います。
こんなしみったれたオナニーを読んでくださった皆様、誠に誠にありがとうございました!

ナポリタンを食べた先々月からも、ちゃーんとセックスしてないけど、今朝は夫とキスはしたよ!
皆さんもハッピーセックスレスライフを!

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出汁茶漬けアユミ

夫と2人の子供を愛する、体は産後、頭脳は中二。 大喜利は見るのもヤるのもスベるのも楽しいので、SEXと同じですね。

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