きのコのプレイルーム〜LGBTQ差別のない社会へ。マイクロアグレッションとは〜
差別するつもりはなくても実は差別になってしまっている場面があります。それは「マイクロアグレッション」かもしれません。
今回は、LGBTQに対するマイクロアグレッションと、それを避ける方法について説明します。
LGBTQとは。多様なセクシュアリティ
「LGBTQ」とは、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつです。たとえば、以下のような種類があります。
L:レズビアン。女性で同性を好きになる人。女性同性愛者
G:ゲイ。男性で同性を好きになる人。男性同性愛者
B:バイセクシュアル。女性を好きになることもあれば、男性を好きになることもある人。両性愛者
T:トランスジェンダー。出生時に割り当てられた性別と異なる性別で生きたいと願う、または現に生きている人
Q:クィア。性的指向や性自認が非典型な人全般/クエスチョニング。性的指向や性自認が定まっていない、揺れ動いている、決めたくないという人
ただし、LGBTQには他にもさまざまな種類があり、その数は数百もあるとされています。
たとえば私はノンバイナリー、クワロマンティック、パンセクシュアルを自認しています。それぞれ、以下のような意味で使われます。
ノンバイナリー:自身の性自認・性表現に「男性」「女性」といった枠組みをあてはめない人
クワロマンティック:自分が他者にいだく好意が恋愛感情か友情か判断できない/しない人
パンセクシュアル:性的指向が性別にとらわれない人
LGBTQに対するマイクロアグレッション
「マイクロアグレッション」とは、意図的か否かにかかわらず日常の何気ない言動に現れる、マイノリティに対する偏見や差別に基づく見下しや侮辱、否定的な態度を指します。
LGBTQに対するマイクロアグレッションも存在します。たとえば、異性愛を前提とした質問をすることや、トランスジェンダー当事者を間違った性別で呼ぶことなどが挙げられます。
新宿二丁目で飲食店「どろぶね」「どん浴」を経営する長村さと子さんは、自身のお店で発生するマイクロアグレッションについて、「例えば男女カップルが来て、スタッフに対して『性別どっちですか?』と訊いたり、セクシュアリティを聞き出そうとすることがある」と語っています。
マイクロアグレッションを避けるために
まず、相手の性的指向や性自認、望んでいる関係性のあり方に対して差別や偏見を示さないことが大切です。
たとえば以下のように、マイクロアグレッションのない言動をするよう気をつけましょう。
●「ゲイなの?全然そんな風に見えない!」「美人なのに、レズなんてもったいない!」など、無意識のうちにLGBTQに対するステレオタイプを押し付けたり、暗にLGBTQであることを否定するような発言をしていないか、注意しましょう。
●性的指向や性自認について、無用な質問や偏見を示す質問は避けるようにしましょう。ただし、相手が自ら話題にした場合や、自分と親しい関係にある場合は話題として出すこともできます。
●どのような性的指向や性自認を持っているかによって、LGBTQの人々の中でも、それぞれが自分自身をどう呼びたいかは異なります。
そのため、相手がどのような呼び方を好むかを本人に確認することが大切です。分からない場合は「彼」や「彼女」と呼ぶより「XXXさん」と名前で呼ぶ方が適切です。
●ジェンダーに関する偏見やステレオタイプをもってしまうことがありますが、それはLGBTQの人々に限らず、誰にでも当てはまることです。ただ、それを自覚しておくことが重要です。
相手を見た目の性別や性自認で決めつけることなく、その人がどう思い、どう行動するかを尊重しましょう。
このような具体的な行動も大切なのですが、根本である「差別とは何か」「自分の中にも差別意識や偏見があるのではないか」を考える姿勢をもたなければ、理由も分からずただ言われたルールを守るだけになりかねません。LGBTQへの具体的な接し方と合わせて、その背景も考えるようにしてほしいと思います。
LGBTQに対する差別禁止の必要性
LGBTQに対して”差別をしてもいい”場面はありません。安心安全な生活を送るために、パブリックな場面だけでなく、個人的な関係性の中でもマイクロアグレッションや偏見を出していないか、気をつけることが必要です。
たとえばLGBTQの人達が安心して学校や職場に通えるよう、校則や就業規則の改善が求められます。同性同士のカップルが手をつなぐことや、LGBTQの人達が自分らしく生きることができるように、セクシャルマイノリティに関する啓蒙活動をおこなうことが必要です。また、トイレや更衣室などの性別分けに関するルールも見直す必要があります。
性的指向やジェンダーに関する発言や冗談は、LGBTQの人達に対する差別になってしまうことがあります。そうした発言を避けるよう、周囲の人達に啓発することも大切です。
また、LGBTQのパートナーや家族との接し方についても差別をしないことが必要です。LGBTQの人達のパートナーシップについて、いきなりどんなセックスをするのか質問したりしないようにしましょう。結婚やパートナーシップについて話題になったときには、LGBTQの人達の意見にも耳を傾けることが大切です。
マイクロアグレッションのない社会を作るために
「なぜ、LGBTQを差別してはいけないの?」「差別しないよう要求しておいてお返しをしないのは、一方的な搾取では?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、LGBTQを差別しないということは、非当事者が当事者に対して”配慮してあげる”ようなものではないのです。また、”メリットがあるから差別をしない”というものでもありません(それは裏を返せば、”メリットがあれば差別をしてもいい”という理屈になってしまいます)。
シンプルにいえば、マイクロアグレッションや差別というのは人権侵害のひとつの形であり、「差別されないこと」は誰もが当たり前にもっている人権なのです。
LGBTQ当事者が押し付けられているマイナス要素をなくしてゼロに戻していくことは、当事者と非当事者との立ち位置を平等なものにして、全員の人権を守るための取り組みです。マイクロアグレッションがある今の社会において、当事者と非当事者は対等な立場にはいないため、差別をなくすことは「お互いに配慮する」「お互いに思いやりをもつ」といったこととは意味が異なるのです。
単にマイクロアグレッションを避けるだけでなく、LGBTQの人達含めた誰もが自分らしく生きることができる社会を築くことが目的です。私達は、多様な性的指向やジェンダーについて理解を深め、差別のない社会を作ることが求められています。
「自分にはLGBTQの友達がいるから差別や偏見はない」「冗談や悪気のない言動なら、マイクロアグレッションには当たらない」などということは必ずしもありません。
LGBTQだとかストレートだとか気にせず普通に接すればいい……という意見もありますが、何がその人にとっての”普通”かは千差万別。「私にとっての”普通”が、相手にとっての”普通”ではないかもしれない」「自分の考える”普通”を、相手に押し付けていないか?」ということを考えながら接していくことが重要なのです。
一人ひとりがLGBTQの人達との接し方を考え、少しずつでも差別のない社会を築いていくことが必要です。
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