「先生、春画はオカズに入りますか?」〜葛飾北斎「喜能会之故真通」内の通称「蛸と海女」〜
春画。江戸時代を中心に流行した、性風俗を描いた絵。大家族が基本で、混浴が一般的だった当時の性は、現代よりおおっぴらで明るかったそうです。その雰囲気は春画からも感じ取れ、エロが面白おかしく描かれています。
2回目となる今回、紹介するのは春画の中でも最も有名な一枚と言えるこちら。葛飾北斎「喜能会之故真通」内の通称「蛸と海女」(1814年)です。
代表作「富嶽三十六景」では猛々しい富士山の姿や踊る大波を描き、浮世絵と言えば葛飾北斎の名前が上がるほど。そんな浮世絵師は春画を描かせても素晴らしかったんですね。エロ漫画家としても活躍される一般誌の漫画家さんは、何しろ女性の描き方が美しいですからね。
2匹のタコが、岩陰で裸の女性に絡みつく。小さなタコは唇を吸い、大きなタコは陰部を吸って、肢体や乳首に足を巻き付かせています。絵の周りには喘ぎ声や「ぐちやぐちや」「ぬらぬら」などの擬音が所狭しと書かれているのもこの作品の特徴です。触手モノのエロ漫画にはオノマトペが欠かせないのは古来から変わらないようです。
さて、いくら触手プレイが気持ちよさそうと言っても、タコにはクチバシがあり噛み付く危険性や、吸盤による内出血、そして雑菌などからも、実際にタコとまぐわうのは現実的ではありません。では妄想で「蛸と海女」を再現していきましょう。
例えばSMショーとしてタコに絡みつかれる女性を見せる舞台があったとします。チラシには注意書きで
※タコには踊り食いをしても大丈夫なレベルの下処理がしてあります。
と書いてあることでしょう。さすがスシの国ニッポンだね!
ステージに横たわる全裸の女性の、肩から腹部にかけてデロリと置かれたタコ。あら春画よりだいぶ小ぶりだけど…仕方ない。豊洲で一番大きいのを買い付けてきたって、魚屋が言ってるんだからこれ以上は無茶言わないでよ。2匹?無理だよ、さっき1匹死んじゃったんだもん。鮮度落ちないように冷凍してるよ。さあタコさん!その脚で、吸盤で、おなごをアンアン言わせちゃって!
………動かねー。
そりゃそうだよな。一応横たわる彼女はプロだから、妖艶に踊って喘いで見せてるけど、タコからしたらどこ吹く風。そもそもタコ様が脊椎動物に対して性欲が湧くわけがない。「ヒト科ヒト属のホモサピエンスはおいらで興奮してんの?子孫残せないのに?アホちゃう?」とお考えに違いない。ひえーすみません。まさにマグロ状態、タコなのにね(即死)。
ズンズンという大ボリュームのサウンドと、ギラギラした虹色の照明がヤル気のないタコの粘液を鮮やかに照らせば照らすほど、この企画の無謀さが沁みる。まあ、この後緊縛ショーとかもあるからさ。まだ帰らないでよ。あ、ワンドリンクちゃんと頼んだ?
さて獣姦の何が良くないって、獣側の合意が取れないから動物虐待に当たってしまうんですよね。タコさん今回は女体の上でねんねしていただけとはいえ、動物愛護の方々に怒られたくない。そこで解決策を示してくれるのが、カルト映画の金字塔「ピンク・フラミンゴ」(作中でニワトリとの××あり)。ジョン・ウォーターズ監督にならって、動物は、ちゃんと調理して、責任を持って食べましょう。ピンク・フラミンゴでは未公開シーンとしてニワトリを食べたそうですが、今回はタコだからタコパだね!さて、カウンターのほうに、先ほどステージに上がったタコさんを使ったタコ焼きがございます。焼きたてアツアツ、無料ですので早い者勝ちですよ!皆さんどうぞ…あれ?誰も食べたくない?
ここまで蛸姦についてカタカタ書くため、途中途中でタコについてネットで調べ物をしていたのですが、その中で「タコには痛覚がちゃんとあり、そしてそれを嫌がるという感情も持ち合わせている」という論文を発見し、なんだか萎えてしまいました。そうか…ごめんね、タコ。下処理とか痛かったよね、ぐすん。そもそも陸上では息できないしね。ホントごめん!
北斎は夢を見せてくれたのです。動物は大切にしましょうね!
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