英語とフランス語で育ち、大学・大学院でアイスランド語やサンスクリット語など10種類以上のマニアックな言語を研究する傍ら、持ち前の語学力を活かして世界中のセレブリティを骨抜きにして参りました、全人類のラヴドオル「もも奴」でございます♡

前回の寄稿から、どれほど月日が流れたでしょう。長らくご無沙汰しておりました。皆様いかがお過ごしですか?

ここ数ヶ月間は山あり谷あり嵐あり、波瀾万丈の日々でしたが、身に余る貴重な出来事の連続で、性欲がほとんど消失するほど一瞬一瞬が充実しておりました。もう一度述べます。”性欲がほとんど消失するほど” 一瞬一瞬が充実しておりました。

そうです、最近の自分はセックスにほとんど意識・関心が向かないのです。性器を擦り合わせて互いの粘液をからませあう行為そのものに興奮を感じられない。なんなら情熱的にまぐわい合うよりも、中学生カップルのようなふわっとした一瞬のキスや、居心地のよい空間で酒を酌み交わしながらの小粋な談笑に、エクスタシーを感じてしまう。

「性欲と知識欲は人一倍♡」などとIQ2の口上を述べ、呑気に自己紹介していたあの頃の自分は、何億光年離れた星で、今、何をしているのでしょう。これは生命体としての進化なのか、それとも老化なのか。

そうは言っても、日常のなかで、夫をはじめとするパートナーたちと性的に交わりあう機会はあります。愛と親睦の儀式として、セックスを大切にしたい意思はあるのです。しかし、そこに時間をかけたくない、”quickie[クウィッキー]” で十分というのが正直な心持ち。

はい、お疲れ様です。こんな具合につらつらと、話の枕のつもりで休載期間中の自身の状況について色々語らせていただいて参りましたが、ようやっと今回の講義の主題にたどり着くことができました。すみません。

今回扱うのは “quickie” というスラング。「パートナーとのセックスは儀式として大切にしたい!しかしそれは仕事や趣味の二の次・三の次!ぶっちゃけ、セックスに費やす時間でもっと有意義なことを色々成し遂げたいんだこちとら!セックスに割ける時間は10分が限界じゃー!!」という、忙しいあなたのためのとっておき英単語。

そうです、”quickie” とは、「短時間でちゃっちゃと済ませるセックス」を意味する、とても便利な表現なのです。

元々 “quickie” は「応急処置」や「やっつけ仕事」を意味する一般的な言葉で、アダルトなスラングではありませんでした。しかし、いつの頃からか、せわしない現代社会がファストセックスを歓迎するようになりますと、この時代の流れを象徴するかのように “quickie” が夜の営みの場面で応用されるようになり、「短時間セックス」を意味するスラングへと進化していったものと考えられます。

さてこの”quickie”というスラング、学校では教えてくれなかったでしょうし、日常生活の中でもSNS上でもなかなか見かけることがないでしょう。サムギョプサル和田ともも奴を誤って輩出してしまった変態養成所、私立聖ド○○コ学園の英語の授業でさえ、この単語は取り上げなかったな。

しかしこれは皆様が恐らく人生で一度は耳にしたことがあるであろう、”quick「=素早い、迅速な、あっというまの」” という形容詞の語尾に、「そのような性質のもの」という意味の造語を無限に錬成できるパーツ “-ie” をくっつけて生み出された、単純な構造の新語であることをご理解いただければ、途端に親しみやすい印象を帯びてくるものと思います。

※たとえば、カードや携帯電話をかざしてあっというまに支払いを完了させられる決済サービス “QUICPay(クイックペイ)”の例ひとつ取っても、僕たちの社会には”quick”という英単語が浸透していることがわかります。

一晩二晩じゃ消化しきれぬ膨大なタスク、既読つける暇すらないメッセージの群れ、死ぬまでつきまとう家事という無限地獄、しかしその合間につい気にかけてしまうSNS、いつか読もうと高く積み上げオブジェと化した本の山。そうです、僕は、いや僕たち現代人は、悲しい哉、スローセックスにかまけている暇などないのです!ビジネスにおいて残業することが決して美徳ではないように、セックスにおいても重要なのは時間をかけることじゃない、質だ!

▼Let’s enjoy a impressive quickie filled with love.
「愛に満ちた素晴らしいファストセックスを楽しみましょう」

ちなみに夫は週に1、2度のペースでセックスを求めてきますが、前戯にほとんど関心を持たず即刻挿入で5分もしないうちに射精に至るので、こちらは時短の意味においても体力面においても、とても助かっています。最高のパートナーです。

▼We spooned after a smart quickie like small animals last night.
「僕たちは昨晩、小動物みたいにちゃっちゃと機敏なセックスを済ませて、添い寝した」

ところで、人類の三大欲求を語るときに食欲と睡眠欲ともうひとつ、性欲を挙げる方がときどきおられ、それも間違いではないのですが、厳密に論じれば性欲は個体の生命維持には必要ないので、「食欲、睡眠欲、排泄欲」の三つこそが正しい三大欲求と解釈されます。究極的にはセックスなどしなくても、オナニーで十分に排泄欲は満たされますし、何ならそれすらせずとも、排便・排尿・発汗等で体内の毒素を排泄できていれば健やかに生きられますので、生活の中でセックスを過度に重視することはないということです。

昨今、若い世代(とりわけ「さとり世代」と呼ばれる若者たち)の性欲減退がたびたび話題になり、これを嘆く声も聴かれますが、進化の過程で性欲が失われていっても別に不思議はなく、コンビニのホットスナックで小腹を満たして束の間の幸福を味わうように、ファストセックスでちゃっちゃと手短な充足感や安心感を得るというのも、ひとつの立派な性の在り方のように考えられます。

というわけで、もも奴は魔女として、ゆったり丁寧に生きることを実践する身ではあるものの、忙しい日々の中でQoLを上昇させるためのひとつの選択肢として、だらだらと時間をかけない、愛に満ちた質の高い”quickie”を肯定していきたいと、改めて強く感じたのでした。

Thank U 4 reading!!
C U next time.

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もも奴

英語、フランス語、日本語のトライリンガル教育を受け、グローバルな幼少期を過ごす。 上智大学文学部英文学科、および同大学院文学研究科英米文学専攻にて、古英語、アイスラン...

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