英語とフランス語で育ち、大学・大学院でアイスランド語やサンスクリット語など10種類以上のマニアックな言語を研究する傍ら、持ち前の語学力を活かして世界中のセレブリティを骨抜きにして参りました、全人類のラヴドオル「もも奴」でございます♡

さて、ほんのり春めいて参りました今日この頃。うららかな季節に限らず、万年発情期の皆々様におかれましては、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

デパ地下のお菓子屋さんには「桃の節句」を意識した愛らしい雛祭りスイーツが並び、地元の農園の無人販売所には菜の花や新じゃがなど、早春の大地のお恵みが顔を揃えるようになりました。深夜の散歩中に通りかかる公園の茂みや多目的トイレからは、お盛んなカップルの営みの気配がなんとなーく感じられ、懐中電灯片手に覗きにいきたい衝動に駆られます。

「春」は英語で”spring“と申しますね。これはさすがに皆様ご存知…ですね?春先にまとう薄手のコートは「スプリングコート」と呼ばれますし、大型アウトレットパークなどでは年度末から年度始めにかけて在庫一掃の「スプリングセール」が開催されたりします。”spring“は日本人の生活にもしっかり根付いた英単語です。

spring” は「春」の他に、「泉」「根源・本源」「跳躍」「バネ」などなど、多岐の解釈を抱えるinterestingな英単語なのですが、元々は「急に動き出す・湧き出す・飛び出すもの」という抽象的概念を広く指す言葉でした。

たとえば「地表に急に湧き出した水」という意味で “spring” が用いられますと、それはすなわち「泉」と解釈されますし、そこから「物質が溢れ出す源」のイメージが確立され、「根源・本源」という意味が付加されるようになったと考えられます。あるいは文明が進んで「バネ」という部品が生まれたときに、「いきなり飛び出す物体」という解釈で “spring” が当てられたことは全く自然で、想像に難くありません。

さらに、動詞の”spring“には「発芽する」という大切な意味があります。これは間違いなく「植物の命が地表に急に飛び出す」というイメージから来る解釈です。「春」を “spring” と表現するように至った経緯には諸説ありますが、まさに「植物が芽を出す季節」であるから、という説が有力だそう。

英語(ないし英語のご先祖様である古い古い言語)では、「湧き出すもの・噴き出すもの・飛び散るもの」に対してどうも”sp-“の音を当てたかったらしいのです。
実は僕たち日本人の生活の中にも”sp-“から始まる英語由来の言葉はいくらでも散見されます。

例えば、
①ディズニーランドの人気アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」でおなじみの “splash“。これは「水がびしゃっと飛び散る」という動詞。
②世界中に多くのファンを抱えるアクションシューティングゲーム「スプラトゥーン」は、英語圏で”splatoon”と表記されますが、これは「液体などが跳ねてぴしゃっと鳴る音」を指す”splat” という単語と、「小隊」を意味する”patoon”という語を掛け合わせた神センスの造語。てっきり僕は今の今まで”splash” + “toon”「漫画・アニメ」だと思っていました。調べるって大切なことです。恥をかくところでした。
③整髪剤や塗料など、日常生活の至るところでお世話になる”spray“「スプレー」も例外ではありません。本来は「噴霧」を意味する言葉です。
④似たようなところで、水を散布する文明の利器であるスプリンクラーは、英語で表記すると”sprinkler“。やはり例外なく”sp-“ファミリーの単語。
⑤スーパーマーケットで近年ときどき見かけるようになった、豆苗そっくりの「ブロッコリースプラウト」という野菜。この 「スプラウト」とは、「植物の芽」「発芽」を意味する言葉で、語源は先にも触れたように「地表に飛び出るもの」。英語圏では、もやしもカイワレも厳密に区別せず、あの手のひょろっとした弱々しい見た目の野菜は大概まとめて “sprout” と呼びます。雑!

さあ、ここまで来ると脳内ピンクなmanmam読者の皆様は、ある単語を頭に思い浮かべ、あれが”sp-“から始まるのもやはりそういうことなのか…!?と、にやついておられるのではないですか?

そうです、お精子を意味するあのドイツ語の「スペルマ」”Sperma“という単語もまた、立派な”sp-“ファミリーの一員と考えられます。英語では”sperm[スパー(ム)]”と表記します。

いきりたったマッスルスティックの先っちょから、どぴゅどぴゅどぴゅっと飛び出し、噴き出し、撒き散らされるあの白く濁った生命のスープ!遠い遠い昔の英語話者のご先祖様たちは、精液を「子孫繁栄の湧き水」や「エクスタシーの水しぶき」という風に捉えていたのかもしれませんね。

あ、「性器から噴き出すエッチな液体」といえば潮も忘れちゃいけません。「潮吹き」は英語で “squirt[スクワー(ト)]”と言いますが、これも多分”sp“族の言葉に分類されるはず。マニアックな音声学の話になるんだけど、p音とk音は実は「無声破裂音」という仲間で、”sp“が進化の過程で “sk” とか “sq” に変身しちゃうことは、あり得ない話じゃないんだよな~。

この”squirt“。古くは「唾をぺっと吐く」という狭い意味の言葉でしたが、やがて「筒状の物体から液体を噴射する」「液状のものがほとばしり出る」という汎用性の高い語義を獲得して、日常の様々の場面で使われる単語になり、エッチな文脈では「潮吹き」や「ぶっかけ」と解釈されるようになりました。

海外のアダルト動画サイトで「潮吹きモノ」「ぶっかけモノ」を漁りたいなら、検索キーワードに “squirt” と打つのです。ご所望のズリネタが見つかることでしょう。

ちなみにここ数年、めちゃめちゃスピりまくってる著者ですが、「霊的な」「崇高な」を意味する”spiritual“や、「精神・魂」を意味する”spirit“もまた、どうやら”sp-“ファミリーに属す言葉のようです。「気」や「霊」は確かに「湧き出すもの・溢れ出すもの」。根本的には「精液」や「潮」と同質のものなのですね。古代の英語話者たちの、事物の本質を明確に捉える観察眼、そして世界を言語化するセンスにはつくづく驚かされます。脱帽。

あれ…。私は最初、何について話していたのでしたっけ。そうだ、「春」がどうして英語で “spring” と名付けられたのか、そんな素朴なトピックから出発したのでした。裸で床に転がって鬼ころしを吸いながら、徒然なるままスマホのドキュメントアプリに指を走らせ3時間半。まさか話が”sperm“「精液」 や “squirt“「潮吹き」に行き着くとは全く想像していなかったな。これだから知の冒険は楽しくてたまらない。

結局ね、「性」を探求することは、自分自身を知ることで、自然界を知ることで、宇宙を知ることなのですよ。多分、森羅万象の本質はエロスなのです。

Thank U 4 reading!!
C U next time. xoxo.

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もも奴

英語、フランス語、日本語のトライリンガル教育を受け、グローバルな幼少期を過ごす。 上智大学文学部英文学科、および同大学院文学研究科英米文学専攻にて、古英語、アイスラン...

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