サーッという雨の音と交じり合う繊細なピアノの旋律。
窓ガラスにポタポタと滴る雨粒が、まるで美しい模様の様にすら見えるのは、彼のピアノの音色のせいなのか、もしくは彼の演奏する姿そのものが、絵画のようだからなのか—―

水曜日の朝。
予報通りの雨が降りしきる中、いつものように勤め先の『ミュージック&アート・アカデミー』の絵画教室に出勤すると、隣の教室からピアノの音が聴こえた。邪魔しないように、こっそりとドアの隙間から覗くと、ピアノ講師の上野さんがどこかで聴いたことのあるクラシックを弾いている。

「相変わらずカッコいいなぁ…」

世界レベルのピアノの迫力と美しさは勿論のこと、上野さんのスッと伸びた背中、細く美しい指、ペダルを力強く、時に優しく踏む長い脚、全てが完璧過ぎる。
ボーっと吸い込まれるように見惚れていると

「おっす」
「ぅわっ!?」

急にポンと肩に手をおかれ、驚きでビクッと跳ね上がる。

「…ビックリし過ぎだろ。アホか」
「なぁんだ、司馬さんか…急に声かけないでくださいよ」
「挨拶に急もクソもあるかよ」

そう言って、よく日に焼けた逞しい腕を組み、くしゃっと笑う姿は、さすがSNSで『イケメン過ぎる陶芸家』と言われるのも頷けるカッコよさだ。
週に二回、この陶芸教室で講師をしている司馬さんは、私より数年先に入社していて、初めて会った時から頼りになるお兄ちゃんのような存在。

司馬さんのブランド『SHIBA』は世界的に有名な陶芸ブランドの一つで、お洒落な雑貨屋に行けば大抵司馬さんの器が置いてあり、それを見かける度、いつも少し自慢げな気持ちになる。

陶芸家とは思えない屈強なマッチョ体型で、肩まである黒髪をいつもひとつに無造作にまとめ、高い鼻筋に切れ長の一重。まるでイケメン武士のようなルックスなのに、笑うと何だか可愛い…という、モテない訳がないスペックの持ち主なのに、何故かずっと私みたいな人間を長年可愛がってくれている。

「お前、最近彼氏と会えてんのか?」
「え?うーんと…いつだったかな、前会ったの…」

ポリポリと頭を掻きながら真剣に思い出そうとすると、ブッと吹き出される。

「覚えてないくらい前かよ。浮気されんぞ、そろそろ」

「…永原さん、彼氏いるの?」
「!!!上野さん!」

さっきまでピアノを弾いていたはずの上野さんが、突然私と司馬さんの背後に現れ、いつになく驚いた表情で立っていた。

「司馬さんお疲れ様です。ごめん。聞こえてきて。永原さん、彼氏いるの?」
「えええええあああの、その、遠距離なんですけど、はい、一応…」
「付き合って長いよな。でも全然ラブラブではなさそうだぜ」
「ちょ、司馬さん、余計な情報はいいから…!」

「へぇ、そうなんだ…」

予想外の会話に慌てる私をよそに、上野さんはどことなく冷たい表情のまま、じゃ俺は授業に。と去って行ってしまった。

「お前、顔真っ赤だぞ」
「司馬さんが彼氏の話なんか始めるからでしょ!!」
「はいはい。じゃぁな、また帰る時声かけろよ。車で家まで送ってってやるから」
「…はぁい…」

何だかんだ優しい司馬さんに背中をポンっと押され、私も自分の教室に向かう。
今日も一日頑張ろう!エプロンを身に着けると、隣の教室からまた美しいピアノの音色が聴こえてきて、スッと背筋が伸びる気持ちになる。

バタバタといつも通り全ての授業が終了した後には、約束通り司馬さんが愛車のSUVで家まで送ってくれた。

「有難うございました!」

車から降りると、運転席の窓を開けた司馬さんがヒラヒラと手を振る。優しく微笑まれると、思わず胸がドキンと高鳴るほどカッコいい。

「お疲れさん。おやすみ」
「おやすみなさい」

走り去る車のテールランプをボーっと眺めながら、もし司馬さんが彼氏だったら…と考えてしまう。
口は悪いけど、ただの後輩の私にもこんなに優しいんだもん…きっと彼女にはもっと優しいんだろうな…。

家に入り、ドサッと荷物を置いてソファに倒れ込む。
ハンドルを回す司馬さんのよく日に焼けた筋肉質な腕と、指の先まで続く男らしい血管を思い出す。

司馬さんて、どんなセックスするんだろ。
彼女と車に乗ってたら、キスとかするのかな…
もし…いつものように家に送ってもらった時に、車で司馬さんに迫られたとしたら――…?


「そろそろ着くから寝るなよ」
「あー、ちょっとウトウトしちゃってました…すみません」
「呑気に寝てて、俺に襲われても知らねぇぞ」
「またまた。司馬さんが私を襲う訳ないじゃないですか」
「…なんで」

「なんでって…。だって、私に興味ないでしょ?司馬さ……って、ぅわっ!」

急にブレーキがかけられ、ガクンと体が前のめる。

「司馬さ、どうし…」

驚いて運転席の司馬さんを見ようとしたその瞬間、私の唇は司馬さんに奪われていた。

「んっ…」

噛みつくように、何度も角度を変えて強く、激しくキスをされていたかと思うと、ヌルリと司馬さんの熱い舌がねじこまれ、私の脳内と口の中をかき乱していく。

「んん…は…ぁ」

あまりの熱いキスに朦朧とした頭で司馬さんの肩に手を置くと、カチャリと助手席のシートベルトを外される。それと同時にグッと腰を引き寄せられ、さらに深く口づけられる。
ピチャリ、とねっとりとしたお互いの舌のいやらしい音が車内に響き渡り、私も気付けば無我夢中になって司馬さんの唇に食らいついていた。

「ふっ…蘭子、お前割と積極的だな」
「…!!だって…」
「お前のせいで、カチカチになっちまったぜ…?ここ」
「え…」

司馬さんの下に向けられた目線に合わせて、私も下を向くと、司馬さんのジーンズのチャックの部分がパンパンに膨らみ、ぶ厚い生地の上からでもすぐ分かってしまうぐらい大きく、硬く盛り上がっていた。

「…こんなに…」

目を見張る私の髪を優しく撫でながら首筋にキスをする司馬さんのジーンズの膨らみに、そっと手を添える。石の様に硬くなったそこに少し触れただけで、司馬さんがピクッと動く。
それを見て、自分の中の欲望が、ムクムクと熱を帯びて湧き上がってくる。
私はそのまま、司馬さんのジーンズのチャックを下げ、ボタンを外し、ジーンズと下着を少しずり下げた。

「…ぅっ…」

露わになった司馬さんのそれは、太く、硬く、驚くほど大きく隆起していて、思わずゴクリとつばを飲み込む。優しく直接手で撫でつけると、司馬さんが小さく唸る。

「すごい…おっきぃ…」

片手ではおさまらないその大きな陰茎を、ゆっくりと上下に根元からさすっていく。
たまに先端を指でなぞると、ビクンっとなった司馬さんが大きく息を吸う。

「…司馬さん…口でしても…いい?」

さする手を止めないまま、上目遣いで司馬さんを見る。

「…っ…そんな目で見られたらっ…出ちまうだろうがっ…!」

OKのサインと受け取り、私は出来る限り大きな口を開けて、まずはその先端をスッポリと口の中に入れる。カリの部分を舌で舐めながら、顔を上下させ、刺激していく。

「くっ…ぁ…」

根元まで口に全て入れるには、大きすぎる。一度そっと口の中から先端部分を出すと、指で陰茎の割れ目をいじりながら、唾液をたっぷりと含ませ、下からねっとりと根元を舐め上げた。

「蘭子っ…おま…どこで覚えてきたんだよっ…」

ハァハァと息を荒くした司馬さんが、私の髪の毛をクシャリと鷲掴みにする。
おかまいなしに硬く隆起したその根元をベロリといろんな角度から舐め、時に茎と先端の段差に舌を添える。

「…マジでエロいって…ヤバい…」

そう言って小さく喘ぎ続ける司馬さんこそ、汗ばむ額、そして表情から、男のフェロモンが溢れ出ていて、私の欲望をさらに掻き立てていく。
再び先端を口の中に入れ、根元を強めにピストンしながら吸い上げる。

「くっ…ぁあ、はぁっ…」

私の唾液と、司馬さんの精液が混ざりあった卑猥な音と、司馬さんの快感で悶える低く色っぽい声だけが車内に響く。

「蘭子っ…も、出るっ…」

もう耐えきれない、と言わんばかりの司馬さんの合図を聞き、私はさらに下の動きと手の動きを早めていく。

「ぐっ…んっ…あ…ぁ…!!」

熱気で湿った運転席のウインドウに手をつき、司馬さんは大きくのけぞり、私の髪の毛を強く掴んだまま果てた。
その見事な大きさからは当然であろう、たっぷりとした白く濁った液が私の口の中に勢いよく出され、私はそれを口の端から少し垂らしながらも、必死に飲み込む。

「ハァ…ハァ…」

胸を大きく上下させ、呼吸をする司馬さんをゆっくりと見上げると、司馬さんは額に汗をにじませ、いつもの優しい笑顔で私の頬を撫でた。

「司馬さん…」
「じゃ…次は本番と行きますか」

そう言って、司馬さんが私に覆いかぶさる。えっ!?と驚いた私は、助手席の背もたれにガンっと頭をぶつけ――…

イラスト:竹あき嬢


「いったぁ…」

どうやらソファの角に頭をぶつけたらしい。
パッと現実に引き戻され、後頭部をさすりながらクッションに座り直し、先ほどまでの妄想を反芻する。

「ヤバい…次司馬さんの車乗るとき、絶対平常心でいられない…」

またもや後悔を呟きながら、私はパンツの上からでも分かるほどグッショリと濡らしてしまった自分の中心を洗い流すべく、風呂場に向かうのであった。

つづく♡

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ヘモグロビン子

歩く妄想癖"と言われてウン十年。 すべてのエロスは妄想に通じ、すべての妄想はエロスに通ず。 ヘモグロビン子の妄想ワールドに皆さまをお連れします。 皆でSAY!NO MO-SO NO LIFE!

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